heartdiary1224’s blog

『心の中の大切な日記』 誰かの勇気につながってほしい。。そう思って書かせていただきました。

第1章 初恋

ある日、電車通学の俺は
電車に乗り込むために
必死に階段を駆け上がり
ぎりぎり電車に乗り込むことができた。

ホッと、一息ついて周りを見ると
席はいっぱい空いていた。

しかし席に座らずドアの側で立つ
髪の長い女子高生が近くにいた。

それが彼女とのはじめての出会いだった。

自分の学校から5駅離れた場所に
ある高校の制服だった。

悲しそうな顔をして外の景色を眺める彼女。
よく見ると彼女は涙を流していた。

電車に乗り込んでから15分。
次の駅は俺の降りる駅。
音楽ショップに寄るために時折
この駅で降りている。

彼女の涙を気にしながら
席を立ちドア付近に近づいた。
ドアが開くと彼女も同じ駅で降りた。

彼女は涙を拭き俺の前を通り過ぎた。

足早に歩く彼女。

階段を降りている時、彼女は
足を滑らせて下まで転倒した。

近くにいた駅員が彼女に駆け寄り
大きな声をあげた。
駅員と俺以外、周りには誰もいない。

スーツを着た男性が近くにいたが
関わりたくない様子で避けて走って行った。

駅員は彼女の側にいてくれるように頼み
駅長室へ電話をかけに行った。

彼女の意識は全くない。

彼女の顔を見て
さっきの涙が気になっていた。

しばらくして駅員が戻り、救急車を待った。

救急車のサイレン音が近づき
駅に停車した様子だ。

救急救命士が来て彼女に呼びかけたりしている。
俺と駅員は救急車に乗り込んだ。

鳴り響くサイレン音。

俺は救急車の中で救急救命士
彼女が会談から落ちた状況等を説明した。

救急救命士は彼女の鞄の開け
生徒手帳を見つけた。

生徒手帳には秋野香織と名前が書いてあり
家族に連絡をするよう無線にて伝えている。

彼女の意識は戻らない。

救急車が病院に到着した。

急ぐ救急救命士
駅員と俺は集中治療室の前で
待つように指示された。

しばらくすると彼女の祖母が
看護師に連れられ集中治療室の前に来た。

オロオロと動揺している様子だ。

しばらく無言の時間が続いた。

『おばさん、大丈夫だよ!!』
駅員がそっと微笑んだ。

『大丈夫。。』
俺も小声で言った。

ただ、意識が戻ることだけを願うしかなかった。

そして、また沈黙が続く。。

15分後、医師と看護師が集中治療室から出てきた。

『孫はどうですか』
おばあさんは小さな声で尋ねた。

医師は俺たちの前に立ち彼女の状態を説明した。

「彼女は頭を強く打っており現在のところ
 浅い呼吸で意識はもうろうとしている状態です」
 
駅員と俺は唖然としていた。

処置に時間がかかるため
ここで待っているよう
指示された。

俺は泣き崩れ床に座り込んだ
おばあさんの背中をさすり
椅子にそっと座らせた。

しかし何の言葉も
掛けることができなかった。

午後7時を過ぎ駅員は状況報告の為
職場に戻った。

俺はそのままおばあさんのそばにいた。

しばらくしておばあさんが話し掛けた。

『私は孫と二人で生活している・・』

彼女は片親でお父さんがいたが
彼女が小学3年生の時
川で溺れた彼女を助けるために亡くなられ
それ以来、二人で生活している様子だ。

おばあさんは悲しそうな懐かしそうな顔で
小さい頃からの彼女の様子を話してくれた。

彼女は小さい頃から吹奏楽に興味があり
中学から吹奏楽部でトランペットを
演奏している様子だ。

俺は黙って5分ぐらい
おばあさんの話を聞いていた。

二人は彼女の状態がよくなることを
ただひたすらに祈るしかなかった。

そして、再び沈黙の時間が続いた。

その後、慌てた様子の看護師に
即、集中治療室に来るよう指示された。

おばあさんは心細いからと
俺に一緒に来てほしいと頼んだ。

俺は無言でうなずいた。

看護師に集中治療室に誘導され入った。

集中治療室に入ると看護師の
誘導でさらに狭い部屋に入った。

そこに入ると医師が
重い表情をして立っていた。

二人は医師の前に立った。

おばあさんは医師に彼女の状態を
聞きかけた。

医師は重い表情で伝えた。

「息をひきとられました。
 午後7時15分 ご臨終です。」

『嘘でしょ。先生!』

おばあさんの大きな声が部屋に響いた。

俺はただうつむいた。

医師に誘導され
彼女のベッドに歩いて行った。

彼女は酸素マスクをつけ全く動かず
静かに目を閉じている。

『何で、何でや、香織!香織!! 』
大声で泣き叫ぶおばあさん。

俺は数時間前に会った見ず知らずの
彼女の死に足が震えた。

看護師は彼女の側で落ち込む
おばあさんの背中を何度も何度もさすった。

時間が経過しおばあさんは
少し落ち着いた。

看護師がおばあさんに身内の人に
連絡をするよう頼んだが
誰一人親戚もいない様子だ。

看護師が葬儀の手配等を
おばあさんにいろいろと説明していた。

しばらくして葬儀関係の人が到着した。

俺は夜遅くなった為、家に電話した。
俺の家庭環境は母と二人暮し。
父は3歳の時に失踪している。
電話に母が出た。

『今日・・・だから今日は
 おばあさんの家で泊まる。
 明日はそのまま学校へ行くから・・・』

小さい頃から一人ぼっちの寂しさを知っている。
今のおばあさんの気持ちは少しはわかる。

母は電話の向こうでうなずいた。

電話を切り、おばあさんの所へ行くと
葬儀関係の人がうつむいたおばあさんに
いろいろと説明している。

葬儀関係の人の車に乗り
おばあさんの家へと向かった。

おばあさんはずっとうつむき
悲しそうな表情をしている。

窓越しに何気なく空を見た。
綺麗に光る幾つもの星空。
そして電車に乗っていた
彼女の姿を思い出していた。

車の中はずっと沈黙が続いた。

おばあさんの家に到着した。
家は木造建ての古い家だ。
表札には秋野と書かれている。

葬儀関係の人たちが彼女を抱きかかえ
布団を敷き彼女を仏壇の前に寝かせ
おばあさんに明日のお通夜の
段取りの説明をしている。

俺は今の状況をまだ受け入れられず
仏間の隅に立ってボーッとしていた。

しばらくして葬儀関係の人たちは帰っていった。

『今日はありがとう。。』

おばあさんは俺に座るよう
優しく声をかけてくれた。

おばあさんの顔を見ると
涙が頬をつたっている。

おばあさんは彼女の顔を覆っている白い布を
ずらし彼女の顔をみつめた。

『ごめんな。。香織。お前には
 苦労ばかりかけたな。 。
 いつもこんな私の世話してくれて・・』

一言一言・・
彼女への感謝の言葉をかけていた。

『ごめんな幹夫。。
 香織を死なせてしまった。ごめんな・・』

仏壇のお父さんに話し掛け
涙ぐみずっと手をあわせている。

『お疲れですから横になってください。
 僕が起きていますから・・』

『いや、今日は眠れやんわ。。』

二人は隣のこたつの部屋に座った。

おばあさんは彼女の幼い頃の写真を
押入れから出し懐かしそうな表情で
彼女の思い出話をいろいろと教えてくれた。

俺に彼女との思い出をゆっくり伝えることで
今の寂しさを紛らわせようと
しているように感じた。

そして、一睡もせず朝を迎えた。

おばあさんは朝食を作ってくれた。
目玉焼きと味噌汁とご飯だ。
そして仏壇にご飯を供え
彼女の前にも同じ朝食を用意した。

しかし、俺もおばあさんも
全く食事を食べられなかった。

午前8時におばあさんは電話で近所の人と
彼女の学校へ彼女の死を伝えた。

電話を切ると同時に
玄関の扉を激しくたたく音がした。

俺が玄関の鍵を開けるとそこには
息を切らし涙を流している
制服を着た同級生ぐらいの
女の子が立っていた。

彼女は何も言わず玄関を駆け上がって行った。

仏間から『香織ーー香織!!!』
と何度も泣き叫ぶ声が聞こえた。

静かにおばあさんは話し掛けた。

『ゆりちゃん・・・
 今まで仲良くしてくれてありがとう。。』
『今まで香織を助けてくれてありがとうな。。』

彼女はおばあさんの目をそっとみつめた。

『私は香織を苦しませとった・・・』

そう言いながら彼女はずっと泣いている。

おばあさんと俺は彼女をそっとして居間に戻った。
おばあさんは今までの
香織さんと彼女の関係を話した。

彼女の名前は立花ゆり。

『ゆりちゃんは保育園の頃から香織と仲良しで
 いつも香織の味方やった。。』

『香織が小学校の時、いじめられとって
 相手の男の子を殴ったこともあった。。』

『いつも香織、香織と仲良くしてくれたんや。。』
おばあさんの話をしばらく聞いていると
居間の戸が開き彼女は二人の前に座った。

まだ落ち着きを取り戻していない様子だ。

おばあさんはお茶を入れると
言いいながら台所へ行った。

俺と彼女は二人きりになり
しばらくの間、沈黙が続く。     

『あの、はじめまして木下健介といいます』
俺は重々しい口調で緊張しながら自己紹介をした。
『私、私は立花ゆりです。』
 香織のいとこですか。。』

彼女も涙を拭き声を震わせながら俺に話した。

『い、いや昨日・・
 駅で彼女の後ろを歩いていて・・』
彼女に昨日の出来事を説明した。

『おばさんの側にいてくれたん。。』

彼女の言葉にうなずくと・・・

『ありがとう。。』
彼女は静かに微笑んだ。

優しそうな目をしている。
俺もなんだかほっとして微笑んだ。

おばあさんがお茶をお盆にのせて入ってきた。

三人がお茶を飲もうとした時
玄関の戸が開く音がした。

それと同時に人の声がざわざわと聞こえた。

『おばさん、えらいことになったなー』
『気、落とさんと・・』

近所のおばさん、おじさん・・
いろんな人がたくさん入ってきた。
おばあさんは再び、涙ぐみ話し込んでいた。

俺はそろそろ帰ろうと思った。

『あのぅ。また、来ます。』

『ありがとう。。助かったわ。』
おばあさんは涙を流しながら微笑んでくれた。

鞄に手を取り周りを見渡すと
彼女はどこにもいなかった。
玄関に行くと彼女の靴はもうなかった。

外に出て空を眺めた。
青空には雲が流れていてさわやかな日だった。 

高校へ向かう為にバスに乗り駅へと向かった。
時間はすでに午前9時を過ぎていた。
駅に着くと昨日の駅員が改札口にいた。

『おはようございます』

『昨日、どうやった。
 駅にもあれから連絡がなくてな。
 安静にしているのか。。』

『いや。彼女は昨晩・・・・』

『・・・・』
駅員は無言になった。

『そうか。告別式はいつ・・・
 一緒に行こう。。』

『明日の土曜日の13時からです・・・』

二人は告別式に行く事となった。
明日、駅で待ち合わせることを
約束し俺は高校へ向かった。

いつもと変わらずにぎやかな高校。
楽しく幸せな周りにも今もどこかで
悲しみを背負っている人がいる・・・。
授業中も休み時間も
ずっとおばあさんのことが気になっていた。

次の日、俺は駅に向かった。 

駅員が車に乗って待っていた。
二人はおばあさんの家に向かった。

『あぁ、俺、牧野浩次といいます!!』

『僕は木下健介といいます』

『おばあさん、大丈夫やろか。。』

『心配ですね・・・・』

おばあさんの家への道を説明しながら進んでいる
『秋野』と書かれた案内看板があった。

家に近づくと彼女の同級生も
たくさん向かっている様子だ。

近くの公園の駐車場に車を停め家へと向かった。

家に着くと多くの学生でいっぱいだ。

しばらくするとお経が始まった。

俺はキョロキョロして
昨日ここで会った彼女を探していた。

彼女の姿はなかった。

二人はお焼香をする為、参列した。
おばあさんはひとり座り悲しげにうつむいてる。

彼女の遺影の前には
トランペットが置いてあり
お焼香をするとおばあさんと
目と目があい礼をした。

俺と牧野さんは無言のまま
駐車場へと向かった。

駐車場に着くと彼女がブランコに乗っていた。

俺は彼女に駆け寄り声をかけた。

『こんにちは。
 今日、告別式やけど出やへんの。。』

『う、うん。私はいいよ・・・』
『香織とここで・・・
 お別れしてもいいかなって思って。。』
『香織と保育園の時、よくここで遊んだんやッ。。
 想い出の場所なんや。。』

彼女は空を見上げながら静かに答えた。

この日は澄みきったきれいな青空。

俺もしばらくここにいたくなり
牧野さんに先に帰っていただきブランコに乗った。
『懐かしいなー。。ブランコ!小学生以来や!!』
『香織ともよくこのブランコに乗ったなぁ。。
 古いし昔ののまま。。』

時間が経ち、俺はバス停に向かった。
彼女はバス停まで見送ってくれた。

『今日はありがとう。 。
 なんか、なんかわからんけどほっとできた。。』
彼女は少し微笑んだ。

バスが停車し乗り込んでから
彼女に手を振り微笑んだ。

席に座ると前のバス停から乗ってきた
喪服のおばさん2人が後ろから声を掛けてきた。

『あんた!!あの子がどんなことしたか
 知ってるん。。
 あんな子と付き合うのはどうかと思うで!!
 しかも、葬儀にもでやんてなぁ。。』

俺は何も言わず、外の景色を眺めた。
内心はすごく腹が立っている。

知らない人が彼女のことを
見ず知らずの俺に批判する。
彼女の悪口のように聞こえた。
だから無視をした。

『なんや!!この子、人の話に耳傾けんと
 なんやこの子・・
 あの子と仲がええだけあるわ・・』
おばさん達は俺を罵倒した。

それでもいいと思った。
彼女の悪口を聞くくらいなら
それでもいいと思った。
俺は次のバス停で降りた。

駅までは距離があるが歩いた方がましだと思った。
「あの人達はなんで俺に彼女のことを
 あんな風に話したんやろう」

歩きながら彼女と喪服の人達の関係が気になった。

 

あれから数週間が経過した。

俺はおばあさんのことが気になっていた。

土曜日の昼、おばあさんの家に向かった。
今日も綺麗な青空だ。
駅を降り、バスに乗った。

おばあさんの家の前に着いたが
チャイムがないので何度も何度も呼んだ。

『おばさん、おばさん、秋野さん・・・』

おばあさんの家はチャイムがないので
何度も何度も呼んだ。

しかし、おばあさんは出てこない。

俺は扉を開けた。
鍵はかかっていない。

『おばさん、おばさん!!』

しばらくしておばあさんと彼女が出てきた。

『ごめん、ごめん聞こえなくて。。
 今、おばさんとお昼ごはん
 作っとったんやわ!!』

『おぅおぅ、久しぶりやなぁ。あがって。。』

『おばさん、元気やった!!』

『あぁ、ゆりちゃんが
 毎日、来てくれるから安心やわ。。』

三人は仏壇の前に座り、手をあわせた。

『おばさんの元気な顔、みれてホッとしたわ!!』
俺は立ち上がり帰ろうとした。

『お昼、食べてく?』

『食べてき。食べてき!!
 三人のほうがにぎやかやわ!!』

『じゃあ・・』
遠慮知らずの俺はちゃぶ台の前に座った。

『これはゆりちゃんが作ったんやで。。』
ほうれん草のおひたしと肉じゃがが並んでいた。

おばあさんに対する優しさや素朴さに
俺は彼女に癒された。

俺の本当の初恋だ。

『おいしいなー』
『めっちゃ、料理うまいなー』

『そうやろッ、ゆりちゃん、料理屋できるわ!』

三人の会話も弾み、楽しい時間が過ぎた。

『あぁ、面白いな!!』
『やっぱり、人数が多いとにぎやかでええな。。』
おばあさんはにこやかに話した。

『ごちそうさま!!おばさん、もう帰るわ。』

『ありがとうな。いつでも来てな。
 待っとるよ。。』

『また来て!にぎやかでええし!!』

『はい、また来ます。ごちそうさまでした!!』

二人は外まで見送りに来た。

『ありがとう!!』

しばらく歩き、振り返ると二人は
まだ手を振ってくれている。
俺の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。

バス停に着くと待ち時間が30分もあった。
バスを待たずに駅まで歩こうと思った瞬間
後ろから声が聞こえた。

振り返ると自転車に乗った彼女がいた。

『おばさんがりんごを持ってきなって!!』

『ありがとう。。』
俺はりんごを受け取った。

『バスに乗らへんの。。』

『あと、30分もあるで駅まで歩くわ』

『そうなん、じゃあ私の自転車乗ってきなよ。。』
『私が後で取りに行くから。。』

『それは悪いわ』

『じゃあ、二人乗りで駅に行こッ!!』
彼女はそういうとニコッと笑った。

そういう話になり
彼女を乗せ駅まで自転車を進めた。

俺は今まで女の子と二人乗りを
一度もしたことがない。
はっきりいってドキドキしている。

しばらく無言の二人。

『なんかクラブしとるん?』
彼女が尋ねた。

『科学部』

『ううん、そうなんや。。』

『実験とか好きなんや!!』

『小さい頃から興味があって!
 ゆりさんは・・・』

『私は吹奏楽部・・
 ぜんぜん行ってへんけどな・・・』

『ああ・・・そうなんや!
 楽器の演奏できるんやんなぁ。。』

『フルートが担当・・・
 まぁ、そこそこやけど。。』

『すごいやん。。』

二人の会話は弾んだ。

そして駅に着いた。

『今日はごちそうさん・・おいしかったで!!』

『また、おばさんのところに行ったってな・・・
 来週の土曜は無理。。』

『ええッ・・』

『おばさんの誕生日なんよ。。』

『あッ・・そうなんや!
 じゃあ、ぜひ、ぜひ、ぜひ行くわ!!』

『ほ、ほんと。。おばさん、喜ぶわ!!』

俺は土曜日におばさんの家に行くことを約束した。
電車に乗り外を眺めると田んぼ沿いに
自転車を漕ぐ彼女の姿がみえた。

空を見上げると綺麗な夕焼け空だった。 

あれから1週間が経過した。

俺は駅の近くのケーキ屋で
誕生日ケーキを買いバスで
おばあさんの家に向かった。

家に到着すると台所の方から
二人の声が聞こえてきた。

俺は台所の窓から挨拶をした。

『あれ、早かったなぁ!!』

『いらっしゃい。。』

家の中に入るとテーブルの上には
二人の手作り料理がいっぱい並べてあった。

『あっ、ケーキ買ってきてくれたん!!』

『ありがとうな。。』

三人はテーブルの前に座った。

『あぁ、おばさん!
 オレンジジュースで乾杯しよに!!』

『ゆりちゃん、ありがとうな。。』

『乾杯しよう!!』

三人はオレンジジュースで乾杯した。

『かんぱーい!!!』

『おばさん、お誕生日おめでとう!!』

おばあさんはにこやかで嬉しそうだ。

後ろを向くと仏壇の前にも
オレンジジュースや食べ物が供えてあった。

から揚げ、肉じゃが、お寿司、餃子、春巻き・・・
全部、おばあさんとゆりちゃんの手作りだ。

俺はお腹いっぱい食べた。

『ごちそうさーまでした!!』

『おいしかった?』

『うん、もちろん!!』

『あぁ。よかった。おばさん。。
 ようけ作ってよかったなぁ。。』

『そうやな。多いと思たけど
 ちょうどええくらいやったな。
 さすが二人とも食べ盛りや!』

『ジャーーーン』

彼女が台所から手作りケーキと
俺が買ったケーキを持ってきた。

『あぁ、ケーキあったんや。
 ごめん。。重なったな。』

『ええやん!ええやん!
 ケーキは別腹なんよ~』
彼女はそう言いながら
ケーキをテーブルに置いた。

『ローソクあるで火点けよっか。。』

『ええなぁ。点けよ!!』

『健介君、点けてッ』

俺はローソクに火を点け
彼女はカーテンを閉めた。

『ハッピーバースデーツーユー・・・』
俺と彼女は同じタイミングで歌い始めた。

二人の歌を聞きおばあさんは涙ぐんだ。

そしておばあさんがぽつりと言った。

『ゆりちゃん、去年は香織と
 誕生日してくれたなぁ。。
 毎年、ありがとうな!
 あの子も喜んどると思うわ。。』

『息子が死んでから私は寂しかった。。
 でも、香織やゆりちゃんが
 おったで寂しくなかったわ。。』

『でも、あれは‥おばさん・・・』

『あれは運が悪いかったんや 。。』

『でも、おばさん・・・・』

『運が悪かったんや。。。』

俺には会話の意味がわからなかった。

『健介君、この子がいてくれるで
 私は寂しないんや!!
 私のもう一人の孫みたいなもんやで・・・』

『おばさん!!もっぺん、、
 ハッピーバースデーツーユー・・・しよにッ!』
何か今までとは違った空気を感じたが
俺はとにかく明るく歌いだした。

『そうやな。。うたおぅ。うたおぅ!!』

『そうやな。うたおぅ。ありがとうな。。。』

三人はもう一度、笑顔で歌った。

『ハッピーバースデーツーユー・・・』

『おばさん、ロウソク・・』

『あっ、そうやったな。』

『フッー』
パチ!!パチ!!パチ!!パチ!!

『おめでとう!!』

『おめでとう!!』

『ありがとう。嬉しいわ。。』

おばあさんと彼女はケーキを切り皿の上にのせた。
俺は久々にケーキを食べた。

『俺、満腹で、もう、食べれやんわ。。』

『じゃあ、家に持ってく!!』

『うん』

『何人、家族なん。』

『二人。。母さんと俺。』

『あっ、そうなん。うちはオヤジと二人。
 よう似とるね。。』

『じゃあ、二人分、入れとくわッ。』
彼女はパックの中にケーキを二人分、入れた。

『おばさん、もう帰るわ。
 とっても楽しかったです。
 また、来年も呼んでください。。』

『あぁ、もちろん!
 健介君、来てくれたで余計に
 面白かったわ。ありがとうな!!』

『おばちゃん、うち、健介君送ってくわ。』

彼女はバス停まで送ってくれた。

『今日は楽しかったね。料理おいしかった?』

『あぁ、おいしかったわ!!
 ケーキもおいしかったわ』

『あのケーキなッ
 本、見ながら作ったんよ。。
 うちの新作ケーキやに!!』

『そうなんや。。新作ッ!!
 おいしかったわ~』

二人の上には空一面の夕焼けが広がっていた。 

『綺麗やね。今日の空。。
 私、いつも空を必ず見ることにしてるんよ。
 空は悲しい時も、楽しい時も
 私の上にあるしね。。。』

『へぇ。。そうなんや!
 俺もたまに見るんや。。 綺麗やな!』

『小学三年の時、お母さん・・・
 家出したんや。。』

『そうなんや。。』

『朝起きたら、もうこの家にはおれへんで。
 家を出ますってね!』
『たぶん、わたしのせいなんやと思うんやけど
 その空は悲しそうな色やったなぁ。。
 空っていろんで気持ちで
 いろんな色に見えるんやで。。』

『そうなんや・・・』

彼女の横顔は寂しそうだった。

『今日の夕焼け綺麗やなーー。
 俺も空を見るようにするわ!!
 最近、見てなかったしなッ』

『俺もオヤジが小さい時に家出してるんや。 。
 ゆりさん、いろいろと辛いこともあったやろ。
 でも、今やで。。今が大切なんや!
 こうやってゆりさんと夕日をみたッ!!
 俺にとって今日の空は最高の空なのだ~ 』

『そうやな。最高の空やなッ。。
 またおばさんの家に行ったってな!!』

そうしている間にバスが遠くから見えた。

『うん。また行くわ。。』

窓越しに彼女に手を振り
彼女はニコッと静かに笑った。

バスが発車し彼女の姿は小さくなった。

夕焼け空を眺めながら
なんだかとても温かい気持ちになった。