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heartdiary1224’s blog

『心の中の大切な日記』 誰かの勇気につながってほしい。。そう思って書かせていただきました。

遠い記憶 2

それ以来、ゆりは毎日のように
香織さんの家に遊びに行った。
学校帰りは寄り道をして
二人で公園で遊んだりもした。

二人はゆっくりゆっくり時間をかけ
以前のように仲良くなった。

中学になってもゆりへの
いじめはなくならなかった。
香織さんはゆりのいじめには
一切加わらなくなった。
だが・・・内気な香織さんは
助けることもできなかった。

中学入学と同時に二人は吹奏楽部に入部した。
ゆりはフルート、香織さんは
トランペットを担当した。
コンクールの練習も互いの家で練習した。

コンクールの2週間前のことだった。
クラブの数人が小声で話していた。
『ゆりやけどさぁ、人を死なせておいて・・
 知っとる?あの子なっ。香織の親を・・・』

ゆりはたまたま聞いてしまった。

クラスでは浮いていたが
クラブでは仲のいい子もいた。
だけど仲のいい子にも無視され始めた。

香織さんは一度
『ゆりをいじめるのはやめてッ!』
と部員の前で大声で叫んだことがあった。

それから目に見えるいじめはなくなった。
しかし心に感じるいじめが消えることはなかった。

ゆりはコンクールに行かなかった。
それ以後、クラブにも行かないようになった。

ある日、机の上に落書きがされていた。
『殺し屋 ゆり追放』と書かれていた。

ゆりは勇気を出して『誰がやったん!!』
と大声で叫んでも皆、無視だった。

日が経つごとにゆりは荒れていった・・・
というより外見で近寄り難い
雰囲気に見せかけていた。
髪も染め、化粧もした。
学校では皆と違った行動をした。
ゆりのいじめはなくなったと同時に
みんなとの距離も今まで以上に離れた。
しゃべり掛ける人もいず孤独な学校生活だった。
教師の目線さえも冷たく感じた。
香織さんとゆりはクラスが違う為
学校では話す機会がなくなった。

時折、他校の荒れた連中も
バイクに乗りゆりを遊びに誘った。

だが、ゆりは決して連中と遊ぶ事はなかった。

それはゆりには学校帰りに
必ず行く場所があったからだ。

ゆりは学校が終わると
必ずおばあさんの家に向かった。
もちろん部活には行きたかった。
しかし、私が側にいると香織が
またいじめられる・・
という思いから行かなかった。
ゆりにとって癒しの場所は
おばあさんの家だった。
部活で香織さんの帰りが遅い時は
ゆりが料理を作り、二人で食べた。
香織さんと二人で料理本を
見ながら作った事もあった。
三人で食べる食事は最高の時間だった。
二人は学校では会話する事は減ったが
ここではいろんなことをおもいっきり喋った。

ゆりは高校に行かずに働こうと思っていたが
香織さんの説得で高校に行こうと決めた。
二人で受験勉強もした。
互いに別々の高校に受かり
手をとりあい喜んだ。

高校生になり二人の会える時間は
この場所だけだった。
香織さんに好きな人ができ
相談にのった事もあった。


俺は香織さんの恋愛の話を聞いているうちに
電車の中で泣いていた
あの涙の意味がなんとなくわかった。


ゆりの話は続いた。


香織さんには同じ高校に通う
ずっと好きな人がいた。
幼なじみでゆりも知っている人だ。
保育園の時は一緒に互いの家で
遊ぶこともあった。

香織さんはずっと片思いのままだった。
ゆりには中学三年になって
初めてそのことを伝えた。

香織さんは亡くなる一週間前に
告白したが振られた。

『ごめん、お前・・・なんか重いんやわ~。
 地味で寂しいっていうか。。
 親父が死んでばあさんと二人。
 なんか重いんよな~
 あんなに仲のよかったゆりのことも
 いじめてたよなッ!
 まぁ、ゆりがあの日・・・
 あんなことしたからそれはわかる。
 まぁ、俺もゆりをあれ以来
 無視していたしなッ!
 関わりたくないやん。
 俺は、どっちかと究極の選択をされたら
 ゆりのほうがいいかなッ。
 地味なお前と付き合うって
 俺にとって重すぎるわッ!
 もしかして、罰ゲーム・・・
 俺、急いでるからッ』

こんな言葉と共に断られた。

あまりにも冷たい言葉に
香織さんはうつむくだけだった。

香織さんは泣いてゆりに伝えた。
ゆりも泣いた。
悲しい夜だった。

ゆりは高校の門前で
この幼なじみをずっと待った。
香織さんに伝えた言葉に腹が立ち
悔しくて眠れなかった。

とうとう会えた・・・。

顔を見たと同時に怒りの気持ちが
爆発しそうになった。
ここは門前で人目もある。
近くの公園まで彼に来てもらった。

『純也、香織に何を言ったん。。』
ゆりは落ち着いて聞いた。

『いや!別に・・・。
 あいつが俺のことを
 好きか嫌いか俺にとってどうでもええ。
 ただあいつなんかに興味がないから
 断っただけッ。何が悪いッ!』

素っ気無い表情で彼は答えた。

ゆりは怒った・・・。

『だったらッ
 お前が香織と付き合えばええやん。』

彼も少し苛立ち
ゆりに再び言葉を返した。

ゆりの目からは気づかない間に
涙が溢れていた。

『あんたにあの子の何がわかるん!!
 なんで家族のことを・・・。
 香織に興味がないならそれはしょうがない。
 だけど・・なんで・・・
 昔のことを思い出させることを言うのッ。
 なんで!!なんで!!
 香織はずっと苦しんでいたんよ。。
 なんで!!なんで。。。』

彼は耳をほじりながら
めんどくさそうに聞いている。 

 

『お前に言われたくないよ。
 お前こそ母ちゃんが死んで
 寂しかったんやろ。
 それであんなひどいことして・・・。
 近所の人も言っていたわ。
 最低やなぁ。。
 お前ともう話したくないし!
 関わりたくもないッ!!
 じゃあなッ。』 


・・・ゆりは何も言えなかった。

彼はゆりの肩を叩き、帰っていった。

彼は変わった。
昔はゆりと一緒に香織を
いじめから助けた時もあった。
だけど、今はその面影もない。
彼の背中を見て、ゆりは地面に
しゃがみこみ泣いた。


・・・・・・・・・・・


『健ちゃん!そんなことがあったんや。。』


俺はゆりの目をじっと見て聞いていた。


『こんな私でいいの。。』
ゆりは心配そうに聞いた。

『もちろんいいに決まってる。。
 何もゆりは間違ってない!!
 こんな私とか言ったらあかんで。。
 世間がなんて言おうと俺にとってゆりはゆり。
 俺らは俺ら。これからもよろしくなっ!!』

『・・・・ありがとう。。』

ゆりはニコッと微笑んだ。


俺は迷ったがゆりに
あの日のことを伝えた。

『あのなッ。
 電車の中で香織さん見た時、泣いてたんだ。。』

『香織さんは辛い気持ちやったと思うわ。
 香織さんの涙も
 ゆりの涙も悲しい涙やった。。
 でも・・・二人の友情で悲しい涙が
 温かい涙になったと思うわ!!』

『そうかなぁ。。
 香織も天国でそう思ってくれてるとええな。。』

『そう思ってる。。
 俺も今、温かい気持ちになったもん!!』

ゆりは微笑み少しホッとした感じにみえた。

『健ちゃん、このりんご甘いなぁ。
 八百屋のおじさん2個も
 おまけしてくれたんやでッ!!』

『得したな~
 もしかしてッ
 あそこの八百屋のおじさん・・・・・。』

二人は何気ない話に盛り上がった。