heartdiary1224’s blog

『心の中の大切な日記』 誰かの勇気につながってほしい。。そう思って書かせていただきました。

最終章 届けたい想い

『ゆりの検査結果がわかった時・・・
 頭が真っ白になった。
 病名は伝えずに
 検査入院をしてほしいと強く伝えた。
 
 それでもゆりは老人ホームに行き続けた。
 いくら俺が反対しても無視やった。。
 今、やれることをやる!って言ってな。。
 そんな思いが強く・・・
 少しぐらいの熱があってもな。。
 でも・・・母さんの手紙を読んで
 ゆりの気が変わったんだ。。
 ゆりが今まで押し入れで眠っていた
 雛人形を出していた。
 俺も一緒に出した。
 なんの会話もせず、無言で出した。。
 箱の底から死んだ母さんの
 手紙が入ってたんだ。。
 ゆりと俺は黙って読んだ。
 その日・・・ゆりが治療すると言い出した。。』

『木下君、読んでいいよ。。』

1通の手紙にはこう書いてあった。


あんたらがこれを読んでいる時は
私はいないかもしれん。
これは毎年、毎年書いて入れとったんよ。
この季節が来るたびにこの私が書いた手紙を
読んで1年無事生きさしてもろたと
感謝しとるんや。
お父さんはお雛様飾るん
手伝わへんでここにもしもの
遺書を入れとこうと思ったんや。
遺書といっても自殺なんかを
考えているわけじゃない。
余命数ヵ月という病気になったわけでもない。
だから心配しやんといてな。
もしもの場合の私の気持ちや。
そのために遺書を書いてみようと思ったんや。
本を読んでたら、こんな質問があった。
「人生が残り3日間しかなかったら何をしますか」 
真剣に考えてみた。
3日間を悔いなく過ごすにはどうしたらいいか?
そして、一番したいことが見つかった。
それは、あんたらにメッセージを伝えること。
あんたらと出会ったことが私にとって
どれほど幸せなことだったか。
あんたらからどれほどたくさんの
喜びと生きがいをもらったか。
私があんたらにどんなに感謝しているか。
そのことを心の底から伝えたい。
素直な言葉で伝えたい。
だから、もし万一のことがあって
そのメッセージを伝えることなく
世を去ることになったとしたら
私はそのことを悔やんでも悔やみきれやん。
だから、生きているうちに普段の言葉のままの
私の気持ちを手紙に毎年、毎年、書くことにした。
ひなまつりが来るごとに幸せに感謝できるしな。
これから、私の本当の気持ちを書くな。
そしていつの日か、私がこの世を
去ったとしてこの気持ちは
永遠に消えることはあらへん。
あんたら、私がもし死んでても
悲しんだらあかんで。
ゆり、わかっとるか。
ゆり、私も同じように親が
天国へ行き悲しい思いをしたんや。
同じ気持ちやで。
母さんも同じ思いしたんや。
でもあんたらと楽しく過ごした。
後悔はあらへん。だから、悲しまんといてな。
ゆり、あんたがいきいきと成長していく姿が
母さんにとって最高の喜びなんや。
母さんは親としての喜びを知ることができた。
ゆりもいつか親になったときに知るやろう。
クリスマスやゆりの誕生日がやってくるたびに
いかにしてあんたを喜ばそうかと
父さんと考えたなぁ。
それは、お父さんとお母さんにとって
何よりも楽しみなこと。
ゆりはお父さんとお母さんに
たくさんの喜びと楽しみと感動を
もたらしてくれた。
父さんのこともたのむで。
あんたが保育園で父の日にあげた
プレゼントを覚えてるか?
あんたが描いてくれたお父さんの顔の絵や。
お父さんはそれを会社に持っていって
引き出しに入れているんや。
仕事で辛いことがあっても
その絵を見ると元気が出るそうや。
ゆりの存在が、お父さんとお母さんに
元気と勇気とやる気を与えてくれた。
私たちを人間として成長させてくれた。
私たちはあんたからたくさんのものを
もらってるんや。
父さんをたのむで。
とにかく、私のことで悲しんだら私が悲しいんや。
だから落ち込まず、悲しまず
安心して今したいことをしたらいい。
今を幸せに生きたらいい。
母さんは、ゆりがゆりであることを
いつまでも応援するから。

神さまへ

父さんとゆりに出会わせていただき
ありがとうございます。
素敵な家族と幸せな人生をありがとうございます。
来年も幸せな気持ちで手紙が書けますように。。


そんな温かい手紙だった。

俺は手が震えていた。

ゆりから言われているような
そんな気持ちになっていた。


『元気な母さんやった。。
 3月の節句が近づくたびに・・・
 あんた!!ボーッとしてやんと手伝ってよ!!
 私が死んだら必ずあんたらで飾ってよ!
 怒り口調で毎年、愚痴を言いながら飾ってな。。
 俺はそんな母さんの言葉さえも忘れていた。。
 最低や。。。』


お父さんは肩を落とし悲しそうだ。


『ゆりはこの手紙を黙って読んで泣いていた。
 寂しそうな背中だった。。
 ずっと俺が苦しめていたかもしれないな。。』

『いやっ。。そんなことはありません!!
 今、ここにいるゆりも
 この手紙と同じ気持ちだと思います。
 ゆりはお父さんもお母さんも
 大好きだったんです。
 だから、ゆりはこの日記にも
 ごめんと書いているんだと思います。』

俺はゆりのノートをお父さんに見せ
ノートをギュッと胸に抱いた。

『だから、人の為じゃなく
 自分のために治療したんだと思います。
 自分を責めるのはやめてください。
 ゆりが悲しい気持ちになりますから。。。』


そう言いながら俺は
自分自身を慰めていた。


お父さんと俺は
膝をついて泣いた。

お父さんとゆりの関係は
時間とともに移り変わっていった。
誰だって今日がそのまま明日になることはない。
気がつかないだけで
平凡な毎日でも少しずつ違うはずだ。

そう感じた。

そして、紙袋から老人さんたちに
書いてもらったゆりへの
メッセージをそっと置いた。

ゆりと公園で会った次の日に
俺は老人ホームに行った。

老人さんひとりひとりに
メッセージを書いてもらった。

みんなの言葉で元気になってほしい。。
そんな気持ちだった。

おばあさんも筆を持たせたら
『心』と一文字だけだが書いてくれた。

俺は眠るゆりの横で
ひとりひとりのメッセージカードを読んだ。


笑ったゆりに伝えたかった。。
そう思うと涙が止まらなかった。


俺は泊まらせてもらい
お父さんの手伝いをした。

お父さんの希望で
ホームの園長と俺、三人だけの
静かな通夜とお葬式だった。


近所の人は家の前を早足で
通り過ぎるだけだった。


とても悔しかった。
とても虚しかった。


テレビのスイッチを切った時のように
それまで抱えていたいろんな気持ち全てが
フッと消えて真っ暗になったような気持ちだった。

信じられない、信じるしかない・・・
でも・・もしかしたら
嘘かもしれないとずっと悶々としていた。

立花ゆりという芳名板を見ても
何かの間違いかもしれないと
どこかで思っていた。

住職がお経を唱えている時もゆりは違う場所に
いるのではないかと信じていた。

でも・・棺桶を覗き込むと静かな顔をした
ゆりが・・何も言わないゆりがいた。

火葬場が近づくにつれ
驚くほど自分の鼓動が聞こえて焦った。

火葬場に着き、棺桶の窓が開けられ
ゆりとの最後の対面をした。
逃げたいと、本当は少し思っていた。

目をつぶったゆりの顔は
とても優しかった。
今にも「健ちゃん!!」
と呼びそうな・・・


『大丈夫、私が教えるから。まっかせなさい!!』
俺に自信満々な顔で笑っているゆり。


『・・・ええよ』
   こちらこそお願いします!!!』
恥ずかしそうに俺をみつめているゆり。


『なに!これめっちゃ綺麗!!』
微笑みながら空を見上げるゆり。


『私、健ちゃんにずっと
 言いたかったことがあった。
 ずっと言いたかった。
 でも言えなくて・・・苦しかった。。』
真剣に俺を見つめながら話すゆり。


『私なんか、死んだほうが消えたほうがいい!!!
 死んだほうが・・・・
 健ちゃんもそう思っとるんやろッ!!』
涙を流しながら必死で伝えるゆり。


『本当のことを伝えられて本当によかった。。
 健ちゃんありがとう。。。』
辛い表情を見せまいとして、優しく微笑むゆり。


『ジャーン!』
フルートを嬉しそうに見せ
静かな表情で演奏するゆり。


『健ちゃん、いっぱい食べてなッ!!』
嬉しそうにおばあさんとにっこり微笑むゆり。


ゆりのいろんな声と
表情が胸の中を回転し涙が流れた。


棺桶の中にお母さんからの手紙と
老人さんからのメッセージを入れた。

そして・・・
ゆりが握り締めていた
俺の写真をそっと入れた。


お父さんは泣き崩れた。

火葬の前に俺はホームの園長から
そっと言葉をかけてもらった。

『ゆりさんは今から火で燃やされるのではなく
 火で身体を洗うんだよ。。
 今から火で身体を洗い流し天国へ行き
 また天国で思い出を作る。。
 だから、心配しなくていい。。。』

俺は心の中でゆりは
今から燃やされる、焼かれると
何度もつぶやき葛藤していた。

この言葉を聞いた瞬間
なんだか少しホッとしたような気がした。

「ただいまから・・・・・」
火葬の担当者が話し出したがあまり記憶がない。
ただ『ボッ』と火が燃える瞬間の音が
虚しく悲しかったことだけ覚えている。

ゆりが扉の向こうに行くのを
やめさせたい思い・・・
なんかそんな思いも心の片隅にあった。

火葬が始まるとお父さんと園長は
個室で話をしていた。

俺は外に出てただ外の煙と空を眺めていた。
ゆりと俺がいつもみていた空に
そっと煙が雲のように包まれていた。

いつも・・ただ何気なくみていた空を
今はいろんな気持ちで眺めている・・・
いろんな思い出が頭の中でゆっくり回転していた。

1時間30分が経過し俺たちは呼び出された。

ゆりの骨がそこにあった。。
跡形もない姿に俺は涙もでず
静かな気持ちを感じた。
風と共にゆりは広い空の一部になった。。
そんな気持ちで骨壺に
お父さんといれていた記憶しかない。

ゆりは近いところにいるような
遠い場所へいったような
そんな気持ちのままゆりの家に帰った。


家に帰りお父さんと俺は
遺影の前に座った。

ずっと沈黙が続いた。


『ゆり・・・ごめんな。。。』

お父さんがゆりに向かって
話し掛けた。

『ゆり、ごめんな。。
 お前が産まれた時、最高の気分やった。
 母さんも父さんも手を握って泣いてたなぁ。
 オムツを換える時もミルクを飲ます時も
 そこにはいつも笑顔があった。
 お前が歩いた時は拍手して喜んで。。。
 動物園行ったり
 ハイキングに行ったり・・・・・
 お前との思い出は
 あの日から止まっているなぁ。』
 
『あの日、泣いているお前を
 抱きしめていれば。。。
 俺だけでも笑顔で話を聞いていれば。。。』


遠い昔を眺めているような
優しい目だった。

痛いような寂しいような虚しいような
でもそれだけではないような。。
ただ、その言葉は悲しみだけで
生まれているものではないと感じた。
何か、穏やかで温かい何かを含んでいた。


あれから2年が経過した。


お父さんはあれからすぐに
故郷の九州へ引越し一人暮らしをした。
お父さんなりの考えがあったんだろう。
以前の家は壊され空地になり
ゆりのお墓も仏壇も九州にある。


ゆりのいない現実がゆっくりゆっくり
寂しさを募らせ俺は生きる気力も
何もかもすっかり無くしていた。


最期の時にゆりのそばに
いてあげられなかった・・・

受験を応援していてくれたのに・・・

一番そばにいたのは俺なのに・・・

ゆりのノートを何度も何度も読みながら
同じ想いを繰り返し悔いては
自分を責めて心閉ざし暮らしていた。

考えないようにしていても
身体は正直なのか、無理だった。


俺はゆりと一緒に行った場所に
2年間行くことができなかった。
ある朝、ゆりとの思い出の場所へ
行こうと急に決意した。

新しい自分を探したい・・・
そんな気持ちだったのかもしれない。

俺はギターを背負い始発電車に乗り
ゆりと練習した公園へと向かった。

駅に到着した。
駅のホームで会話していた時間を思い
立ち止まって懐かしい気持ちが甦った。

改札口を出て駐輪場に向かった。
そこにはゆりの自転車が置いてあった。
パンクしてハンドルも錆びていた。

告別式の帰り・・・
この場所に置いておこうと思った自転車が
2年間も処分されず駐輪場の片隅に置いてあった。

俺は合鍵を出し、近くの自転車店まで行った。

パンク修理等をしてもらい
公園まで自転車を走らせた。

懐かしい心地のいい風だった。

おばあさんの土地には新築の家が建ち
ゆりの土地は空き地のままだった。

公園に着いた瞬間
ダルマさんが転んだをしている二人の姿が
俺にはぼんやりと見えた。

ブランコに座り
いろんなことを思い出した。
いろんなゆりの声が聴こえてきた。

次に自転車を走らせ
桜を見た公園に行った。
あの桜の木はズシンと
あのまま立っていた。
3人でゴザを敷いた場所に座り
お父さんからもらった写真を見ていた。

ゆりが俺に見せたかった写真。
心からしあわせな気持ちでいたのだろうと
この写真を見てずっと泣いていた。

次に病院の屋上へ行った。
晴れ渡った空に太陽がまぶしく
ゆりと眺めた景色を見ながら歌を口ずさんだ。

ゆりと学校帰りによく行った
お好み焼き屋にも行った。
店の雰囲気や周りの風景は
あの頃と変わっていた。
でも、あの頃のおばさんの気持ち
周りの空気は同じだった。
おばさんがお好み焼きを焼いてくれた。
一人でお好み焼きを食べながら
ゆりと笑いながら話していた
あの頃を懐かしく思い出した。

駅まで自転車を走らせ電車に乗った。
砂浜に行きいつも座った流木に
腰を掛けギターを演奏した。

老人ホームを外から眺めて
いろんなゆりを思い浮かべた。
窓越にぼんやりと景色を眺めている
おばあさんの姿が見えた。
おばあさんの心の中には
ゆりと俺がいる・・・
そう信じた。

プラネタリウムへ行き
満天の星空を眺めた。
ゆりの好きなオリオン座を探し
なんだか温かい気持ちになった。


俺は1日でふたりの思い出の場所を歩いた。
知らず知らずに足と記憶が動いていた。


最後に水族館に行った。
俺達が1番遠出した場所だ。
放課後、電車に乗りいろんな景色を眺め
指差し笑っていた。

水族館はあの日と変わらず
静かで魚が優雅に泳いでいた。

イワシの群れもあの日と変わらず
銀色の光を輝かせ、円を描いていた。
とても嬉しそうな顔をして
見上げていたゆりがそっと浮かんだ。

水槽の中はとても静かで
俺の世界とは全く違う
輝いた世界のように思った。


夜9時を過ぎ
駅のホームで電車を待った。

ベンチに座り自分をゆっくりみつめた。
それでもやはり・・・
俺の世界は白黒写真のままだった。

あの日から、ずっと俺の時間は止まったまま。

歩き出せば、ゆりといた日々が
遠くなっていってしまう。
あの日々に、もう決して手が届くことはないのに
それでも戻れるような気がして・・・
もう一度会えるような気がして・・・
あの日、この場所で歌っていた
ゆりの声が聴こえるような気がして・・・

また・・・
いろんなことが頭を駆け巡っていた。


しばらくして俺の肩を
誰かがトントンと叩いた。

       
振り向くと駅員の牧野さんだった。

『木下君と違う。。』

『木下です。あっ、久しぶりです。』

『やっぱりそうか!!久しぶりやなぁ。』

ゆりへの手紙をお願いした日以来だ。
相変わらず元気そうだ。

『遅れました!!
 あの日、彼女に手紙を渡していただいて
 ありがとうございました!!』
 
『あれからすぐに
 異動になってな。。
 木下君、駅長室まで来てくれる!!』

『懐かしいなぁ。。何年ぶりやぁ。。』

『彼女とは仲良くしているの。。』

『あぁ・・・2年前に亡くなりました。。』

『えッ・・・』


牧野さんは急に走りだした。
俺も急いで後を追った。


駅長室に入り、牧野さんの机の前に立った。

『木下君!!これ!!
 手紙を渡した次の日、木下君に渡してと
 彼女から頼まれてたんや!!
 あれから、異動の辞令があって
 渡さないといけないと思ってたんや。
 木下君と一緒に行った
 おばあさんの家に行ったけど
 空地になっててな。。
 今まで会える日をずっと持っとったんや!!
 木下君、ごめんな。。
 彼女にも悪いことをしてしまった。。』


かわいい封筒に『健ちゃんへ』と書いてある。


『牧野さん、ありがとうございます。。』

『また、いつでも来てなッ!!
 俺はここにいるから!!』


俺は駅長室から優しく微笑む牧野さんに
深くお礼をしてホームに向かった。

タイミングよく電車が待っていた。

席はほとんど空席で
静かな車内に出発の笛が鳴った。

席に座り封筒を見つめ
とても嬉しかったが
開封することに戸惑いもあった。

俺は思い切って封筒を開けた。

封筒の開きの所に
銀色の紙吹雪の下で
演奏している俺達の絵が書いてあった。

その下に小さい文字で
『健ちゃんのことだから
 ハサミで切らずに丁寧に開けると思ったよ。。』
と書いてあった。


封筒には1枚の手紙が入っていた。


 健ちゃん、ごめんなさい。
 今日は逆のホームにいました。
 健ちゃんの所へ行くことができませんでした。
 行こうとしたけど階段で足が止まりました。
 今は会っても健ちゃんを苦しめるだけです。
 健ちゃんは健ちゃんの道を歩いてください。
 健ちゃんの姿を見てそう思いました。
 私の中の健ちゃんはいつも笑っています。
 私のことで悲しい顔はしないでください。
 笑っている健ちゃんが私は大好きです。
 本当、心配ばかりかけてごめん。
 
 ひとつだけわがままなお願いがあります。
 おばさんの誕生日、老人ホームの近くの砂浜で
 健ちゃんと演奏がしたいです。
 今度は私が健ちゃんを待っています。
 その日でちゃんとさよならをしたいです。
 無理なこといってごめん。。
 
 運命の神様がいてもし・・・
 私の気持ちを変えてくれたなら
 その時は健ちゃんと歩いていきたい。
 こんな気持ちも心のどこかにあります。
  
 そう思った時は黙って自転車の鍵を渡します。
 
 誕生日に砂浜で会えたとしても
 会えなかったとしても
 今日の手紙のことは心に入れて忘れてください。

 私がいなくても明るく元気な
 健ちゃんでいてください。
 私にとって、そのことが
 1番のしあわせです。       

                 ゆりより


手紙が震えるぐらい
俺は泣いていた。


『俺に生きる希望を持つんだ!!』
ゆりに応援されているような気持ちだった。


この手紙に出会えてよかった・・・
心からそう感じた。
それは俺にとって
ゆりからの大切な贈り物だった。

2度目の約束・・と笑っていた
ゆりの言葉にも納得できた。

何気なく握った自転車の鍵の温かさも
やっと伝わった。


あの日のゆりと俺は同じ気持ちだった。
そのことが何より嬉しかった。


ゆり、ありがとう。。
その日から温かい気持ちが
何度も何度も心の中を回転していた。


あれから俺にとって
いろんな月日が経過した。


『はーい!!今からとんち勝負をしましょう。
 いいですか!!この紙を見てください。。
 ちょっと破れていますが・・・
 伊藤さん、見えますか!!
 秋野さん、見えますか!!』

俺は老人ホームで働いている。

ゆりがやりたかったこと。
俺もおばあさんの傍にいたいと思った。

最初はゆりがやりたかったことだから・・・
と少しは思っていた。

いや・・・だいぶ思っていたかもしれない。
でも今は自分の為だと思っている。

ゆりがいなくなりいじめた連中を探して
仕返ししたい気持ちが湧いたこともあった。
でも、ゆりなら・・・
人を恨むことはやってはいけない!!
それより次をどう生きるかということに
気持ちを切り替えるだろうと思った。

俺を失わずにいられたのは
ゆりとの思い出が幸せすぎたからだと思います。

君を尊敬しています。
君と出会えたことに感謝しています。
俺はゆりと出会って幸せでした。

おばあさんはあれからここで
俺と共に過ごし亡くなりました。

いつも懐かしい目で窓の外を眺め
声を掛けるとニコッと微笑んでくれました。

おばあさんと過ごした貴重な時間は
私にとって大切な財産です。

俺にもいつか死が訪れると思うが
その時まで小さなしあわせを探しながら
ゆっくり歩いて行きたいと思う。

時間が悲しみの中で静かに流れて
俺もだんだん泣かなくなった。
生きる気力もなくしてた時もあったのに
今では、結構未来について考えていたりします。

あれから泣いてないとはいえませんが
ずいぶん、気持ちの整理がついたように思います。
これからは、俺の為に生きて行こうと
思えるようにもなりました。

今でも、この言葉は俺の支えです。

こうなるのが運命だったとしたら
こんな運命を受け入れるのも
また運命なんだと思います。  

君に出会えた全ての偶然と
君から教えてもらった温かさに
心からありがとう。。

もういちど、ありがとう。。





長い目でお付き合いいただき
ありがとうございました。


あなたの隣にいる人との
出会った頃を覚えていますか。。

あなたの見えない場所で・・・
忘れた所で・・・
大切な気持ちがきっと変わらず動いている。

心の中にそっと入れておいてください。。
物語が誰かの勇気に繋がれば嬉しく思います。

ありがとうございました。


一行でも結構です。
ぜひ、こちらへご感想を
書いていただけると嬉しく思います。
ありがとうございました。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=54538&page=15&id=13043652



あの時の日記はあなたの心の中にありますか。
ここにいろんな人の温かい気持ちが集まりました。
あの日からゆっくりと月日が過ぎています。

そしてこの場所が懐かしい場所に
なりつつあります。


この日記が誰かの勇気につながることを願って。。


『心の中の大切な日記』続編 どうぞよろしくお願いいたします。
 

s.maho.jp